自分にできることは、限られている
新しいことを始めるとき、私たちはつい先を見通そうとします。綿密な計画を立て、数字を積み上げ、うまくいく根拠を揃えてから動きたくなる。
先日、知人の経営者に勧められて、吉田満梨さんと中村龍太さんの著書『エフェクチュエーション』を手に取りました。目からウロコの連続でした。新たなビジネスを立ち上げようとするすべての経営者に、手に取ってほしい一冊です。例に漏れず、私も大きな刺激を受けています。
内容の詳細は、ぜひ実際に読んでいただきたいので、ここでは割愛します。
「足るを知る」と重なるもの
私の座右の銘は「足るを知る」です。
この本には、その言葉と共通するエッセンスがあまりに多く、驚きました。改めて大事に胸に留めておきたいと、心に決めたほどです。
なかでも心に残ったのが、「自分が何者かを知る」ことの重要性です。
これは、自分はすごい、何でもできる人間だと、自分を過大評価することとはまったく違います。むしろ逆です。自分は大した人間ではなく、できることは限られている。そう深く受け止め、理解するところから始めることが大事なのだと、私は読み取りました。
自分を大きく見せようとするほど、できないことまで抱え込み、かえって身動きが取れなくなる。経営の現場で、そうした場面は少なくありません。
予測できないことを、前提にする
何でも予測でき、思ったとおりに事が運ぶ。全知全能の神のように振る舞えることは、新しいビジネスにおいてまずありません。
本の中でも、優れた起業家たちは市場調査や過度なシミュレーションに頼っていなかったことが紹介されています。
計画どおりに進むと信じて動けば、想定外の出来事はすべて失敗になります。けれど、予測できないことを前提にすれば、想定外はむしろ次の手を考える材料になる。この発想の転換に、私は強く惹かれました。
つまるところ、やってみなければわからないし、予測もできない。やりながら気づくこともあるでしょう。出会いの中で、自分にはない経験や知識を与えてくれる人、支えてくれる人が現れることもあります。
偶然を、意識してつくる
大切なのは、それが偶然の産物ではないということです。そうした出会いや気づきが生まれる環境、仕事の選び方、他者との関わり方を、自己理解とともに意識的につくっている。ここに、エフェクチュエーションの真髄があるのだと思います。
この考え方を、メソッドとして使いこなすことよりも、自分のあり方として持つこと。私には、そのほうがしっくりきました。
思えば、先日の展示会で私たちが得た一番の収穫も、自分たちを完膚なきまでにメタ認知できたことでした。あの3日間の意味を、この本が言葉にしてくれたように感じています。
足るを知る、という出発点
自分にできることは限られている。大した人間ではない。
それを頭で理解するだけでなく、心から腹落ちさせる。足るを知るとは、きっとそういうことなのでしょう。できないことを知っているからこそ、人の力を借りられる。手元にあるものを確かめるからこそ、迷わず一歩を踏み出せる。
すべては、そこから始まるのだと思います。